これまで印象に残っているお仕事を教えてください。
入社した頃から関わっていた愛知県の離島の案件が印象に残っています。既設の岸壁に津波対策を施すと同時に、フェリーが安全に停船できるように係船柱を立てたり、緩衝材をつけたりするという補修工事で、入社1年目の頃は先輩に教えてもらいながら基本設計をさせてもらいました。

港湾・内廣が磨いた
「根拠」と「強い意志」
休日はジムで筋トレをしたり、好きな映画を観たりして過ごす内廣さん。また年に1回、年度末の繁忙期が終わった頃、社内の電車好きの友人と旅行に行くのも楽しみ。文中に登場する愛知県の離島の他にも、飛騨高山・大阪などにも足を延ばします。
流域整備部
内廣 俊介UCHIHIRO SHUNSUKE
2014年入社
工学部 社会開発システム工学科卒
Part.01
これまで印象に残っているお仕事を教えてください。
入社した頃から関わっていた愛知県の離島の案件が印象に残っています。既設の岸壁に津波対策を施すと同時に、フェリーが安全に停船できるように係船柱を立てたり、緩衝材をつけたりするという補修工事で、入社1年目の頃は先輩に教えてもらいながら基本設計をさせてもらいました。
1年目で基本設計というと勉強が大変だったのではないですか?
はい。津波対策というとコンクリートを太らせる工法が多いのですが、今回はアンカーを打って留めるという方法でした。最初は知識がないので、工法の本や基準書を隅から隅まで読みまくり、必死に考えながら図面を起こしました。また離島のため、コンクリートなどの資材を船で運ばなくてはならず、普通の工事に比べると資材の価格が大幅に上がるなどの特殊な条件も加味する必要があり、苦労しました。
現場には行かれるのですか?
2年目に同じ物件の詳細設計を担当させてもらった時、そこで初めて現場に行きました。実際に現場を見ると、これまでの図面に描かれていなかったものがいくつも見つかり、それをふまえて詳細設計に落とし込んでいきました。
図面に描かれていなかったものというのは?
例えば、船を繋ぎとめる係船柱ですが、実際に現場で見るとすごく錆びついていて、このままではすぐにダメになってしまうことが発覚しました。それを取り換えると予算が百万円単位で跳ね上がってしまうなどの情報も入ってきます。
現場に行かないと分からないことも多いんですね。
そうです。それに、入念にチェックをしていても、見落としや勘違いがあったりします。ですから、仕事をする時はできるだけ想像力を働かせて、図面に描かれていないことも含めて多角的に考えないといけない。それが、入社2年目に私が得た教訓でした。でも最も困るのは現場に行って実際に自分の目で見ても、まだ分からないことがある、ということです。
どういうことですか?
地面の中がどうなっているかは、現地で見ただけでは分かりません。土壌もそうですし、土の中の構造物も。以前の図面が残っていることもありますが、必ずそれが正しいというわけでもありません。もし工事開始後に何か問題が起きたら、その都度、緊急対応をしなければなりません。
Part.02
離島の案件では、工事開始後に問題が起きたりしたのですか?
起こりました。私は入社1年目にその案件の基本設計、2年目に詳細設計を担当しました。3年目に離島で工事が始まり、より細かい土質調査を行うと、想定していた土層の厚さにずれがあると分かりました。そこでアンカーの変更など、設計を一部変更する必要があり、急きょ私が設計の見直しをしました。
海中の土の層の厚さはボーリング調査が行われていたのではないですか?
もちろんボーリング調査は行われていました。でも自然が相手なので、調査結果と設計上の想定がピッタリ一致しないということは決して珍しいことではありません。
なぜ新人の内廣さんに声がかかったのですか?
1年目・2年目と私が担当してきて、私が状況を一番分かっていたからだと思います。
状況というのは?
例えば、使用するコンクリートの厚みや地盤強度の数値など。前にも言いましたが、どういう経緯でこの設計に決まったかという経緯、言い換えれば「根拠」です。担当していない人が、ゼロからその根拠を探すのは大変ですし、時間もかかります。ですから、私が対応して設計変更をしました。
なおさらこの案件に愛着がわいたのではないですか?
そうですね。実は工事が終わった後に、フェリーに乗って見に行ったことがあります。同じ課の先輩たちと毎年旅行に行くのですが、その年はたまたまその離島に行こうという話になり、良い機会なので見てきました。
実際にご自身の目で見て、いかがでしたか?
自分が新人の頃に計画した護岸が完成し、それを見ることができたわけですから。それはもう嬉しかったですよ。
Part.03
これからの目標を聞かせてください。
やはり港湾に関わっていたいですね。
港湾の面白さってどこにありますか?
なんと言っても、工法の多さだと思います。港湾は他の分野に比べると関連する工法がとても多く、地盤や港湾の形状などでさまざまな選択肢から最適な工法を選ぶのは単純に楽しいと思います。
日本は島国ですから、港湾は必ず必要になる仕事ですね。
それに近年、自然災害がどんどん増えている気がします。少し前にも、関西国際空港で船が連絡橋に衝突して復旧までにかなりの時間がかかったことがありました。私も同じような仕事に携わる者として、とても気になっていました。これからも、そんな重要な港湾を津波や高潮の被害から守れるよう注力していきます。